熊本市花園公民館に行ってきました
宮尾有さん(熊本市花園公民館・社会教育主事)
美術の先生から公民館へ
もともとは、彫刻やインスタレーションをやっていて、
中学校の美術の教員になったんです。
そのうち、小学校の特別支援学級で勤めるようになり、
すすめられて社会教育主事の資格をとって、
公民館ではたらくようになりました。
熊本市内には19の公民館がありますが、
だいたい1人は社会教育主事がいて、
館を超えて、みんなで集まる定例会もやっています。
以前は月に2回は行われていて、
いろんな議論や知見の共有も活発でしたが、
今は、月に1回と、その機会も減ってきているのがちょっと残念。
なんとか関係者一同で盛り上げていけたらなと考えています。
わたしのように学校から公民館へきた人は、
そんなに多くもないですが、少なくもありません。
学校でやっていたことと、公民館でやっていることがつながっていくことも多いんです。
子供たちと一緒に育てたハーブや作品を販売して、
売り上げでホットケーキミックスを買ってパーティをしたり、
落ち葉を集めて堆肥のスペースを作ってカブトムシの幼虫がたくさん集まったり。
特別支援学級でもいろんなことをしてきました。
やってみたいことや楽しいと思えることを、一緒に形にしていく。
暮らしや生活の中で学んでいく。そういうところは、似ていますよね。
真面目に仕事をしているけど、遊んでいるように思われることも
今、ちょうど進めているものの1つが「花園ボアザンプロジェクト」。
ボアザンというのは、フランス語で隣人という意味。
公民館の敷地の開墾して、雑草を抜いて、
畑のような、花壇のような、お庭のような、
そんなスペースを作っています。
近所の方が、いつでも自由にきて、種を撒いたり、水を撒いたり、
育ったハーブやスナップエンドウなどを収穫できるようにしています。
やっぱり、建物の外でそんな作業をしていると、
お互いに声をかけやすいですよね。
そんな会話の中から、ご近所付き合いが生まれたり、
プロジェクトが始まったりもしていきます。
顔の見える関係性になってわかってくる地域の課題もあります。
一見、遊んでいるだけのように思われてしまいがちなんですが、
そんなふうに、会話が生まれやすい状況をつくっておく、
というのも公民館の大切な仕事の1つだなと考えています。
公民館で働いたことのある先生が学校にいるということ
学校で先生となって働いてみると、
保護者の方々との関わり合いはあるものの、
地域との接点がとても少ないんです。
でも、スクールコミュニティやコミュニティースクールと言われるように、
学校と地域の連携というのは、よく話題になりますよね。
そんな時に、公民館での在職経験のある先生が学校にいたら、
地域とのつながりが豊かになりそうですよね。
私はいい年齢になってきましたが、
学校と公民館の両方で働いてわかってくることが
たくさんあるなと感じています。
とはいえ、学校は、授業作りや学級担任に加えて
部活もありますから、なかなか先生が地域に目を向ける
余裕がないという状況もあります。
顔が見えるところに手立てが生まれる
人それぞれに幸せのあり方があるように、
そこに集う方々によって公民館が果たすべき役割は千差万別です。
それが故に、公民館は地域によってもまちまちですし、わかりづらさもあるのかもしれません。
よく公民館は、「つどう・まなぶ・むすぶ」場所と呼ばれたりしますが、
顔が見えてくると、それぞれの気なることや気の向くことが
お互いにわかってくるし、だからこそ、実現したり解決したりする方法も
わかってくると思うんです。いきなり地域の課題とか地域の未来と言われても、
抽象的で、もわっとしていると手がかりがありませんから。
公民館では、そんな手がかりや糸口をずっと探しているのかもしれません。