公民館のしあさって
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指宿図書館に行ってきました

指宿図書館に行ってきました

下吹越しもひごしかおるさん(鹿児島県指宿いぶすき市立指宿図書館)


自分たちで、自分たちの地域の図書館を運営する

今は、鹿児島の指宿(いぶすき)図書館の館長として働いていますが、

もともとは保育士だったんですね。

ただ、保育園で働きながら、

子どもたちに絵本の読み聞かせをする「おはなし会」のボランティアをしたり、

自宅を私設の図書館のようにする「家庭文庫」をひらいたり、

こどもたちと本の幸せな出会いをつくっていきたいなと、

いろいろな活動を進めていました。

そんな中で、地元の指宿図書館が、

指定管理者制度を導入するという話がもちあがったんです。

金太郎飴みたいなどこにでもあるような図書館になってほしくない。

郷土への愛着やネットワークがあるところが担ってほしい。

そんな想いでいたところに、

仲間たちとNPOを立ち上げて図書館の運営を受託にするに至りました。

今回は、「公民館のしあさって」プロジェクトということですよね。

図書館という立場ではありますが、

なにかお役に立てるお話ができたらいいんですが。


一人ではどうにかしたくても

地元の図書館をより良くしていきたいけど、一人ではどうにもならない。

実は、そんな声がわたしたちのところに寄せられたんです。

それまでのいろんな活動を通して、

保育士を始めとして、学校図書館の司書さんなど、

本にまつわる人たちのネットワークがあったからだと思うんですが、

そんな想いに反応する形で、多くの方の熱意が集まりました。

とはいえもちろん、図書館運営は初めての経験です。

それはもう、いろいろ手探りの中での経営です。

それでも、地元の方々からは多くの来館も頂いていますし、

直接、ねぎらいの言葉をかけていただけることも多くあり、とても励みになります。


「良い」図書館って?

「公共」を通すことで、地域の資産を集めて必要な方々にお届けしやすくなりますし、

地域の図書館と学校図書館、公民館も相互に連携することで、

より良い活動になっていくと考えています。

ただ、そもそも図書館の良さってなんでしょう。

単なる「無料の貸本屋」になってしまってはいけませんよね。

人にとって、地域にとって、本というものがどういう存在なのか

ということをよく考えていかなければいけないと思っています。


地域の現状も課題も知っていなければ話にならない

やっぱり、暮らしの中で「使える」公共施設になってないといけないと思うんです。

公共施設が充実しているから暮らしが豊かになる。そんな実感をもてることが大切。

そのためには、図書館側が地域のことを良く知っていなければいけませんよね。

例えば、認知症。

高齢化が進んでいく中で、認知症についてもっと知りたい。備えておきたい。

そういった声も良く聞きます。

そんなときには、市の高齢者福祉の担当課と連携して、

図書館の入口にテーマ展示をつくり、伝える機会を増やしていきます。

なんとなく図書館に訪れたときに、手にとりやすくなりますよね。

それに、指宿ですと、土地柄から観光や農業や温泉あたりがキーワードになります。

やっぱり地域には、独自の歴史や文脈があります。

なにか地域で事業を始めたりする際にも、

それがヒントにもなりますし、

それらに新たな意味や解釈を与えていくことも重要なことだと思います。

賞をとったりするような人気の話題の本から、

ここにしかないような郷土資料、

地域の課題に対応するような本まで。

誰にでもひらかれている施設だからこそ、

本と人との幸せな出会いのための工夫がたくさんあります。


みんなの本を扱うという責任

指宿に続け!とばかりに、

この地域の周りでは、NPOが図書館の運営を担うことも増えてきました。

正直に言うと、1つのモデルになれたことは嬉しい反面、

本当にこれでよかったのかな、という悩みはずっと続いています。

本の選書というのは、やっぱりメッセージですからね。

どんな本を選ぶか、または選ばないかという判断は問われます。

それに本の除籍・廃棄というのも、大きな責任が伴うのでみなさん慎重になりがちですが、

公共施設の財産としてしっかりした指針のもと、運営していかねばなりません。

残すべきものをきちんと残しつつ、一方で棚から本を下ろし、図書館が常に旬であることで魅力的な空間を生み出します。

そんな大きな責任を、わたしたちがずっと果たしていけるのかと不安に思わないでもないですし、

そもそも、自分たちの地域のことを自分たちでより良くしたいという想いで成り立っているので、

安く済むからNPOが運営するという風潮にはならないで欲しいなと願っています。


図書館に息を吹き込む

図書館も公民館も、よく言われるように、ハコ・モノ・ヒトですよね。

そのなかでも、とにかく人。人が大切だと思うんです。

人を大切にし合うことで、図書館も公民館も、

息を吹きかけられて、本来もっている可能性が息を吹き返すはずなんです。

全国にそんな事例がたくさん生まれたら素敵ですよね。


指宿図書館